研究項目としていた、glucagon-like peptide-1(GLP-1)分泌細胞の腔内露出部におけるはNa/グルコース共輸送坦体の存在の証明につては、蛍光色素で標識したNa/グルコース共輸送坦体の抗体と腸管グルカゴンの抗体を用いて二重染色を行い、コンフォーカル顕微鏡を用いて蛍光免疫組織学に研究して、GLP-1細胞の腔内露出部にはNa/グルコース共輸送坦体は存在しないことが認められたことから、腸管内腔に露出したGLP-1細胞は腸管腔のグルコースを直接認識していないと考えられた。したがって、グルコース吸収時におけるGLP-1細胞への刺激伝達機構の存在が想定される。また、腸管腔からのグルコース吸収時におけるGLP-1分泌増加の機構の解明については、神経伝達物質としてアセチルコリンについての研究ではGLP-1分泌がを刺激しないこと、また、bombesin、gastrin releasing peptideやmethionine-enkephalinはGLP-1分泌を刺激するが、グルコース吸収時には分泌が増加しないことから、腸管腔からのグルコース吸収時におけるGLP-1分泌増加には関与していないと考えられられた。 吸収上皮とGLP-1分泌細胞との間に情報を伝達する機構については、腸管腔からのグルコース吸収時において腸管膜静脈系のcAMPが増加し、cAMPの腸管の動脈側からの投与によりGLP-1分泌が増加することから、cAMPがグルコース吸収時のGLP-1分泌増加の伝達機構に関与していることが示唆される研究結果が明らかになりつつある。
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