研究概要 |
(1)胃癌原発巣37例・転移巣(癌性腹水)37例の癌細胞,対照として正常胃粘膜30例さらに癌巣に浸潤しているリンパ球(Tumor infiltrating lymphocytes, TIL)、対照として正常胃粘膜30例におけるTRAIL及びそのレセプター分子(DR4,DR5,DcR2)の発現を検索した。癌原発巣,転移巣共に膜結合型TRAILの発現を認め,またDR4,DR5,DcR2分子も高度に発現していた。さらに転移巣におけるTILでは癌原発巣に於けるそれに比して共に有意に(P<O.01)増加していた。 (2)TUNEL法でアポトーシスの程度を定量的に測定した。癌原発巣,転移巣の癌細胞はほとんどアポトーシスに陥っていないが転移巣のTILは癌原発巣のそれに比して有意に高い頻度でアポトーシスになっていた。 (3)胃癌原発巣,転移巣(癌性腹水)のTILのphenotypeを検討した。その結果、転移巣のTILは胃癌原発巣のTILに比して有意にCD3+T細胞,特にCD8+CD116-,CD4+CD62L-細胞比率が高かった。 (4)正常胃粘膜,胃癌原発巣,転移巣(癌性腹水)の癌細胞,さらにTILにおける細胞内アポトーシス関連分子Caspase8,-10,FLICE inhibitory protein (FLIP)の発現を検索した。癌化〜転移の過程でCaspase8,-10,FLIP分子の発現が有意に増強した。この事は癌細胞のアポトーシス低抗性、癌の進展局所におけるT cell activationの存在を示唆している。
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