研究概要 |
[背景と目的]:ハムスター分離肝細胞において、UDCAはPKCを活性化しかつ細胞質から膜へtranslocationすること、グルカゴン(Glu)受容体とGs蛋白とのuncouplingにより、Glu誘導cAMP産生能が抑制されることを明かとした(AJP)。次に,胆汁うっ滞ハムスターの分離肝細胞において,UDCAを含めた胆汁酸のcAMP産生抑制効果は著明に低下していた。これらは共に、肝細胞膜G蛋白の発現抑制というシグナル伝達機構の障害によること示した(AJP,1997)。更に、ラット大腸癌発癌モデルにおける大腸組織内における、IIA型PLA_2の過剰発現がUDCA経口投与で抑制されることも見いだした(Cancer Lett,1998)。以上のことから、UDCAの作用発現機序について、シグナル伝達、免疫調節の面から検討した。[方法]:HepG2細胞を用い、UDCAのサイトカインとの反応をIIA型PLA_2の発現をRIA法と,mRNAをNorthern blotにて検討した。 [結果]:1);HepG2細胞において、IL-6,TNF-αなどの添加により、IIA型PLA2の転写、蛋白発現ともに正の制御を受けた。UDCAはその挙動を転写レベルで65%、蛋白発現で約40%抑制した。一方,CDCAは添加では,サイトカイン刺激でIIA型PL_2誘導は抑制されなかった。2);dexamethasone(dex)のIIA型PLA_2の抑制に対し、UDCAは相加的であった。3);IIA型PLA_2の抑制について、steroid receptor antagonistであるRU486を用いると、dexの作用は完全に抑制されたが、UDCAの抑制作用は増強した。4);UDCA添加による、IL-6receptorの発現は変化がなかった。UDCA添加を行うことで,gp-130,STAT-3のチロシンリン酸化は、IL-6の刺激による変化を認めなかった。 [総括]:UDCAの作用機序は、炎症に関与するIIA型PLA_2をUDCAは抑制し、それは、グルココルチコイドレセプターを介した経路以外の抑制経路の存在が示唆された。また、炎症性サイトカインのシグナル伝達分子にはUDCAは直接影響を与えていない可能性が示唆された。遺伝子発現調節領域での変化が起きている可能性が想定される。
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