研究概要 |
「背景と目的」我々はAOM誘発ラット大腸発癌モデルの大腸粘膜において、UDCAの経口投与によりアラキドン酸カスケードの律速酵素であるIIA型 phospholipase A_2(IIAPPLA_2)の発現が抑制されることを報告した(Cancer Lett, 1998)。In vitroにてもUDCAは、IL-6刺激によるIIAPL_2の発現増強を蛋白レベル、mRNAレベルで抑制した。そこでUDCAIIaPLA_2発現抑制の機序を明らかにする目的でIIaPLA_2遺伝子の転写調節におけるUDCAの影響を検討した。さらに抗炎症作用機序について、転写因子の修飾作用を検討した。 「方法IIaPLA_2の発現機序が比較的解明されているヒト肝癌細胞のHepG2細胞を用いて、以下の検討をした。1-1)細胞内シグナル伝達(IL-6受容体、gp130リン酸化、STAB3)の変化(western blotting)。1-2)DNA結合蛋白質の解析(IIAPLA2遺伝子エレメントB,C,D)1-3)プロモーター遺伝子の転写活性2)NFκB,IκBの発現の変化(western blotting)。 「成績」1-1)IL-6受容体、phosphorylated-gp130,phosphorylated-STAT-3の発現はUDCA処理にて変化を認めなかった。1-2)エレメントBとの結合蛋白の発現がUDCA存在下で減少する傾向が見られた。1-3)IIaPLA2のプロモーター活性はIL6刺激で2.1倍、UDCA存在下で2.3倍に上昇した。エレメントBを共導入した場合、2.4倍に上昇したプロモーター活性はUDCA処理で1.6倍に抑制された(P<0.01).2)TNFα添加によるNFκ-Bの発現増強は抑制されなかった。 「総括」UDCAはJAK/STAT-3経路のシグナル伝達に修飾作用は示さなかった。IIaPLA2遺伝子のエレメントBに関与する結合蛋白とプロモーター転写活性がUDCA存在下で抑制される傾向にあり、UDCAによるIIaPLA2抑制作用は、遺伝子発現調節領域に関与する可能性が示唆された。UDCAの抗炎症作用は、NFκB発現との関連性は少ないと考えられた。
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