研究概要 |
UDCAの発癌予防機序の解明を目的として、以下の検討を行った。DNAトポイソメラーゼI阻害剤として知られる塩酸イリノテカン(CPT-11)のactive metaboliteであるSN-38により誘導される大腸癌細胞のアポトーシスに対しUDCAがどのような作用をもたらすかを検討した。ヒト大腸癌細胞株(HT-29,LS-174T)を用い、single cell DNA electrophoresis (Comet assay)ならびに共焦点レーザー顕微鏡を用いた形態学的観察によりアポトーシスを評価した。Comet assayの結果はheadとtailの信号強度の比をlaser cytometer (ACAS570)を用いて定量化した。JC-1、ならびにCalcein AMとTMRMを用いてミトコンドリア膜電位を定量した。HT-29細胞におけるSN-38によるコロニー形成能の低下をUDCAは40〜60%増強した。それ単独では細胞死に対する効果は認められないが、UDCA(50μM)はSN-38(0.5μM)刺激後のHT-29細胞のアポトーシスを有意に増強した。ミトコンドリア膜電位の低下もSN-38刺激後24時間でUDCA存在下にて著明に増強していた。以上の結果から、SN-38刺激後の大腸癌細胞においてUDCAはミトコンドリアを介したアポトーシスの増強作用を示すと考えられた。これはUDCAがDNA損傷のおきた大腸上皮細胞に速やかにアポトーシスを誘導させ排除する可能性を示しており、大腸発癌予防機序との関連が推測された。
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