研究概要 |
〔背景〕我々は、コレステロール胆嚢結石患者の胆汁ならびに血清中でIIAPL2の発現が増加していること、また、azoxymethane投与による大腸発ガンモデルの大腸組織でIIAPLA2の発現、活性が上昇することを報告した。また、UDCAの投与がこれらの変化を抑制し、病態の抑制に関連している可能性を示してきた。これらの詳細なメカニズムは不明だが、UDCAは様々な炎症病態でのPLA2IIAの過剰発現を抑制する可能性が示唆される。その作用機序の解明のために、炎症性サイトカイン刺激にてIIA PLA_2の発現亢進が認められるHepG2細胞を用いて検討した。〔方法〕UDCA存在下において、IL-6,TNF-αをHepG2細胞に投与した時のIIA PLA_2の発現を、タンパク質およびmRNAレベルで解析した。〔結果〕HepG2細胞において、炎症性サイトカイン刺激時のIIA PLA_2の発現誘導はUDCA(100FM)にて50〜60%抑制された。この発現抑制はmRNAレベルからみられており、IIA PLA_2プロモータの活性はUDCA存在下で抑制されていた。UDCAの存在により、IIA PLA_2プロモータの特定領域へのタンパク質結合の増強がみられ、転写因子へのUDCAの作用が予測された。UDCAの作用はIIAPLA2の阻害剤として知られるDexamethasoneの作用に対して相加的であり、また、glucocorticoid receptor(GR)の阻害剤であるRU486によってUDCAの作用は抑制されなかった。siRNAによりGR発現を低下させた系ではUDCAの作用が減弱することから、以前から報告されているリガンド非依存性のGRの活性化がこのメカニズムの背景にあると考えられた。[結論]UDCAによる炎症性サイトカインにより誘導されるIIA PLA_2発現の抑制が見られ、この作用機序として、直接的な細胞内での転写レベルでの効果が存在することが示唆された。
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