研究課題/領域番号 |
12670461
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池田 均 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (80202422)
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研究分担者 |
柳瀬 幹雄 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (50334397)
新井 雅裕 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (60271566)
富谷 智明 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (90227637)
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キーワード | 門脈圧亢進症 / 星細胞 / リゾフォスファチジン酸 / スフィンゴシン1リン酸 |
研究概要 |
門脈圧の調節には肝類洞を取囲むように存在する肝星細胞が重要であり、特にその収縮、遊走が直接門脈圧に影響すると考えられる。この機能にリン脂質mediatorであるスフィンゴシン1リン酸(sphingosine1-phosphate:S1P)、リゾフォスファチジン酸(lysophosphatidic acid : LPA)が影響することを初めて明らかにした。1.S1P、LPAは培養肝星細胞の収縮能を亢進させた。この作用は低分子量G蛋白質RhoおよびそのエフェクターであるRho-kinaseを介するものであった。2.LPAは培養星細胞の遊走能を亢進させた。この作用もRhoおよびRho-kinaseを介するものであった。3.星細胞において、S1P受容体であるEdg1とEdg5の発現、またLPA受容体であるEdg2、Edg7の発現が確認された。肝線維化過程において、Edg1及びEdg7の発現が低下することが明らかとなった。4.S1P、LPAはin vivoの肝灌流系において門脈灌流液に添加することにより、門脈圧を亢進させた。この作用はRho-kinaseの特異的抑制剤Y-27632の存在下では消失し、同作用がRhoおよびRho-kinaseを介するものであることが明らかとなった。S1P、LPAは血漿中で数百nMから数μMの濃度で存在し、この濃度はin vitroで種々の作用を及ぼす濃度に非常に近いことから、その生理学的並びに病態における意義が注目されてきた。本研究は門脈圧亢進症に着目してこの点について検討を加えたものであり、結果からはS1P、LPAが門脈圧亢進に深く関与することが示唆される。今後両リン脂質mediatorの産生の仕組み、また星細胞収縮、遊走能亢進の機序の更なる解明により、合理的な門脈圧亢進症治療体系が確立されるものと期待される。
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