研究概要 |
急性膵炎発症のメカニズムは未だ不明な点が多いが、膵腺房細胞内において酵素顆粒とライソゾームが異常融合することにより酵素顆粒内の蛋白分解酵素がライソゾーム酵素により細胞内で活性化、その活性化された蛋白分解酵素が腺房細胞傷害を惹起することが膵炎発症主たるメカニズムであると考えられている。しかし、その酵素顆粒とライソゾームの異常融合を来す分子機構は未だ明らかではない。そこで、今回我々は、この異常融合の分子メカニズムを明らかにする目的で本研究を行った。酵素顆粒やライソゾームなどの細胞内膜小胞器官の生理的融合は細胞内小胞輸送機構により司られている。それより、酵素顆粒とライソゾームの異常融合にも細胞内小胞輸送機構が関与していると考えられる。そこで、まず膵腺房細胞内における酵素顆粒の輸送機構を検討したところ、酵素顆粒上にはキネシンやダイナミンなどの分子モーター蛋白質が存在し、これら蛋白が酵素顆粒の細胞内輸送を担っていることを明らかにした。 また、初代培養系を使った研究と平行して、Helicobacter pylori菌産生VacA毒素による培養HeLa細胞内の空胞形成を病理学的細胞内空胞形成のモデルシステムとして用い、細胞内小胞輸送にかかわるmechanoenzymeであるダイナミンがその細胞内空胞形成に不可欠であることを見い出し、さらにはそのダイナミンの機能を抑制すると細胞内空胞形成が抑制され、なおかつ細胞傷害も軽減されることを見い出し報告した(Journal of Clinical Investigation;16:363-370,2001)。
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