臓器移植に際し、ドナー臓器は保存に伴う冷虚血とその後の再灌流に晒される。このような保存再灌流は、臓器障害を惹起する。肝においては、類洞内皮細胞障害とKupffer細胞の活性化が生じ、微小循環障害から肝壊死が成立する。Ischemic preconditioningは、短時間の臓器虚血と再灌流が、その後の長時間の虚血再灌流後に生じる障害を軽減する現象である。我々は、ラットモデルを用いて、ischemic preconditioningが、保存再灌流に起因する類洞内皮細胞障害、及びKupffer細胞の活性化を抑制し、肝移植後のレシピエントの生存率を改善することを示してきた。本補助金の研究期間において、ischemic preconditioningは、肝保存再灌流後のKupffer細胞の活性酸素産生能を抑制すること、アデノシンA1リセプター阻害薬の前投与によって、この効果が消失すること、アデノシンA1作動薬の投与は、ischemic preconditioning同様、肝保存再灌流後のKupffer細胞の活性酸素産生能を抑制することを明らかにした。従って、ischemic preconditioningに伴って虚血組織から放出されたアデノシンが、A1リセプターを刺激することで、保存再灌流後のKupffer細胞の活性酸素産生能亢進を抑制すると考えられた。更に、アデノシンの作用がKupffer細胞に直接作用するか否かを明らかにするため、単離Kupffer細胞を用いた検討を行なった。KCNを用いたchemical hypoxia後の活性酸素産生能を測定したが、無処置細胞の値が安定せず、cell qualityの問題と考えられた。Kupffer細胞単離法の再検討を行なった後、継続する予定である。
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