研究概要 |
(1)肝細胞癌に関連する遺伝子発現profileの検討 肝細胞癌から周辺非癌部に発現する遺伝子を差し引くことにより、肝癌特異的発現を示す遺伝子群を同定した。Gia, GS、pepsinogen C, focal adhesion kinase, DCCなど肝癌や他の悪性腫瘍との関連が示唆されている遺伝子群を同定、さらに数種類の未知の遺伝子も検出し、肝癌に関連する新たな遺伝子と考えられた。逆に非癌部から癌部を差し引くことにより増殖抑制因子であるdecorinのHCCでの発現抑制を見い出した。Decorinは細胞外でTGF-b抑制や細胞周期停止因子p21誘導により腫瘍抑制作用を示し、治療への応用も試みられている。しかし、肝癌でのdecorinの働きはまったく報告がなく、我々の解析により初めて肝癌での重要性が示唆された。 (2)各種慢性肝疾患に関連する遺伝子発現profileの検討 C型慢性肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変における肝内発現遺伝子を、SSHにより正常肝臓ないしは異なる病態を示す肝臓での発現遺伝子と比較解析し、肝疾患の病態を規定している遺伝子発現に関する情報を得た。。慢性C型肝炎からinterferon治療後の肝臓で発現する遺伝子をsubtractすることによりinterferon-gammaによる誘導されるchemokineであるIP-10を見い出した。IP-10は自己免疫性肝炎から正常肝をsubtractしても検出されており、この分子が肝炎発症のkey moleculeであることが示唆された。IP-10は最近、ドイツの研究グループがC型肝炎による移植肝から得た大量のRNAを用いたSSHによる検討でも同定されており、我々の結果がまったく独立の実験によって再確認されるとともに、移植のために摘出された全肝臓を用いたのと同じ結果を、わずかな針生検検体から実現しており、我々の技術的革新性を証明している。原発性胆汁性肝硬変の解析でもPBCの肝内ではミトコンドリア遺伝子が高発現しているという極めて独創的な結果を得た。
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