【背景】c-kit遺伝子は、消化管平滑筋細胞相互のネットワークを構成しペースメーカー機能を有するカハール間質細胞の発達において不可欠である。臨床学的には慢性特発性偽性腸閉塞症、先天性肥厚性幽門狭窄症、ヒルシュスプルング病でその異常が報告されている。 【目的】臨床的な異常が確認されているこれらの疾患における運動異常の背景にいかなる基礎的な変化があるかを検討する。 【方法】c-kit遺伝子のチロシンキナーゼ領域に12塩基の欠失を有する突然変異ラットであるWs/Wsラットおよびコントロールラットを用いて、胃体部輪状筋方向に筋条片を懸垂し400mA、1msecの矩形波を用い電気刺激を行い、c-kit遺伝子異常における胃の収縮、弛緩の特徴およびnitergic neuronの関与につき検討した。さらにNOのnegative feedbackについて、NO donorを用い検討した。また、免疫組織化学的手法により各種ニューロンの組織学的変化についても検討した。 【成績】弛緩、収縮とも周波数依存性に増強した。収縮、弛緩ともコントロールに比しWs/Wsラットで有意に増強していた(p<0.03)。また、NANC弛緩は有意差は無いが、Ws/Wsラットで増強している傾向を示した。NOSの阻害剤であるL-NAMEを緩の抑制率が高かった(p<0.03)。また、コントロールに比しWs/WsラットでL-NAMEによる抑制率は有意に低かった(p<0.03)。NO donorであるsodium nitroprussideによりNANC弛緩は濃度依存性に抑制されたが、その抑制率はコントロールに比しWs/Wsラットで有意に低かった(p<0.03)。免疫組織化学を用いた検討では両群間でcGRP、substanceP、VIP含有神経の分布に差は認められなかったが、NOSの分布はコントロールに比しWs/Wsでより密に分布していた。 【結論】c-kit遺伝子異常を呈する病態では、協調運動の障害があっても、刺激に対する筋の収縮、弛緩については増強する。また、組織学的な変化ではNOSの活性は増強しているが、nitergic neurotransmissionは障害される
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