研究概要 |
【目的】C型肝炎ウイルスの表面蛋白における抗原の三次構造を検討することを目的とした。 【方法】前回の検討にて、表面蛋白の抗原性を維持する最小領域は表面蛋白アミノ酸残基406-644であることを明らかにした。この領域の三次元構造を把握するために、(1)10ヶ所のそれぞれの糖鎖付着可能部位に変異を挿入した表面蛋白発現プラスミドを複数構築する、(2)これをリポソーム法にて培養細胞内にトランスフェクト後、細胞に変異蛋白を発現させる、(3)感染患者の血清中の抗体を使って、免疫蛍光抗体法にて変異蛋白に対する抗体反応を検出する。これらの抗体反応性から、表面蛋白の立体構造を推察する。 【結果】アミノ酸残基476,532,540の変異は、抗体の反応性に変化を及ぼさなかった。アミノ酸残基623の変異は、反応性をわずかに抑制し、アミノ酸残基417,556の変異は、反応性をかなり抑制した。また、アミノ酸残基423,430,448,576の変異は、反応性を完全に抑制した。 【結語】抗体の反応には、アミノ酸残基423,430,448,576の糖鎖が不可欠であることが示唆された。このことから、これらの部位が表面蛋白の外表面に接していると考えられた。一方、アミノ酸残基476,532,540が反応性に関係しないことから、これらの部位が表面蛋白の内側に内包されている可能性が考えられた。
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