研究概要 |
【目的】C型肝炎ウイルス(HCV)表面蛋白の立体的三次構造を予測すること、およびその結果をべースにより強力なHCVに対するDNAワクチンを開発することを目的とした。 【方法】以前の検討でHCVの表面蛋白の抗原性は、アミノ酸残基406-644が必要最小限の領域であることをつきとめた。この領域には10箇所の糖鎖付着部位が存在し、それぞれに変異を挿入することにより抗原性がどのように変化するかを検討した。また、この領域に(1)サイトメガロウイルスプロモーター(2)B型肝炎ウィルスS抗原(HBS)をキメラ化したDNAワクチン、および(3)リコンビナントB型肝炎蛋白ワクチンの計3種類のワクチンをBALB/Cマウス(各グループ6匹)に免疫し、3週間ごとに採血して血中各抗体価及びそのアイソタイプを測定した。 【結果】HCV表面蛋白における10箇所の糖鎖付着部位のうち、アミノ酸残基476,532,540の変異は抗体の反応性に変化を与えなかった。623の変異は反応性をわずかに抑制し、417,556の変異はかなり抑制した。また、423,430,448,576の変異は反応を完全にブロックした。これらの結果は、この蛋白の三次元立体構造を推測するのに極めて有用であった。また、マウス免疫の実験では、(1)(2)ともに抗E2抗体価は12週まで増加し、その後プラトーに達した。これらの抗体のアイソタイプはIgG2aが主体であり細胞性免疫の誘導が強く示唆された。(1)に比し(2)の方が抗体価の誘導能が低く、HBSのアジュバントとしての効果がそれほど期待できなかった。(3)のワクチンの抗体価は9週目にピークを迎えその後漸減していた。 【結語】HCVの表面抗原は、アミノ酸残基423,430,448,576が外表面に露出し、その他の6つの残基は内包されていることが示唆された。DNAワクチンは蛋白ワクチンに比べ持続性、抗原性に優れていたが、HBSは期待されたほどのアジュバント効果を発揮しなかった。
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