我々は、小腸移植手術における新たな免疫抑制療法の開発を目的として、小腸移植モデル動物を用いた末梢白血球光線療法(photopheresis、以下PP)の研究を行ってきた。科学研究費奨励研究(A)平成10〜11年度「小腸移植拒絶反応の抑制」において確立したモデルを用いて平成12年度に施行したラット異所性小腸移植モデルにおける結果を踏まえ、今年度はイヌ同所性小腸移植モデルに対するPPの有効性につき検討を行った。このモデルイヌに、移植手術後ヒトにて臨床使用されているのと同じ白血球除去療法システムを接続、遠心分離法にて末梢血白血球を採取、引き続きこの回路に接続されたUVA透過清潔ガラス板で作成した100μm薄層カセットを循環させ、回路内にメソキサレン(methoxsalen、以下MTX)0.4μg/mlを添加し2J/cm2となるようUVAを照射後、体内へ返血した。上記操作を移植後1、2日目、5、6日目、10、11日目、15、16日目、20、21日目の計10回施行し、移植後10、20、30日目に各イヌを犠牲死させて移植小腸粘膜の状態を確認した。その結果、現実験システムでは一回血液処理量をヒトと同じく2000mlとしたため、貧血の進行により40%が途中で脱落例となった。30日目まで継続できたイヌのうちで、臨床的に拒絶反応が疑われたものは17%(コントロール群:100%)であった。また、66%の移植小腸組織に組織学的に拒絶反応が認められた(コントロール群:100%)が、その程度はコントロール群より軽微であり、PPは移植後の拒絶反応を軽減させる効果があると考えられ、成人に対しては現時点で臨床応用可能と考えられた。また、小児への適応にあたっては、貧血の進行を抑えるため免疫抑制効果の低減を来さない範囲で血液処理量を減量することが必要と考えられた。
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