ヒト肝がん組織を用いたcDNAサブトラクション法により、新規の遺伝子ガンキリン(アンキリンリピートよりなる蛋白)を単離した。機能解析により、ガンキリンは、(1)がん遺伝子であること、2)がん抑制遺伝子のRBと結合すること、(3)そのがん化能は、RBのリン酸化亢進(転写調節)RBの分解促進(たんぱく分解)という二方向により発揮されること、が判明した(Nature Medicine、2000)。さらに、26Sプロテアソームの調節サブユニットの一因子であるガンキリンのがん化能について、他のたんぱくの分解への関与がないかということを調べた。ガンキリンを過剰発現した細胞株では、あるがん抑制遺伝子産物の分解は高度に促進されていた。RB蛋白の場合とは異なり、ガンキリンは、そのがん抑制遺伝子産物とは複合体を形成していなかった。さらに、このがん抑制遺伝子産物の翻訳後修飾にも影響を与えていなかった。RBとは異なった機序によるたんぱく分解の経路の存在が示唆された。次に、転写調節という側面からのガンキリンのがん化能について、複合体を形成する他の転写因子への影響を調べた。その転写因子のDNA結合能をブロックすることで、その転写活性化能を抑制していた。ウイルス発癌を中心に解明されてきたヒト肝がんについて、内因性タンパク(ガンキリン)によるがん細胞の「転写とタンパク分解の制御」という点からその発がん、悪性化を解析した。
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