研究概要 |
ヒト肝がん組織で過剰発現する遺伝子ガンキリン(アンキリンリピートよりなる蛋白)を単離した。その機能解析により、ガンキリンは、(1)がん遺伝子であること、2)がん抑制遺伝子のRBと結合すること、(3)そのがん化能は、RB蛋白のリン酸化亢進(転写調節)と分解促進(たんぱく分解)という二方向により発揮されること、が判明した(Nature-Medicine,2000)(Alcohol Clin Exp Res,2001)。ガンキリンは細胞周期を制御しているCDK inhibitorであるINK4タンパクに拮抗的に働くことにより(他の研究者の報告による)、CDK4 kinaseと協調、相互作用して、RBタンパクをリン酸化していることがわかった。さらに、26Sプロテアソームの19S調節サブユニットのひとつであるRpt3(S6)サブユニットと複合体を一過性に形成することも判明した(J Biol Chem,2002)。ガンキリンを過剰発現した細胞株では、あるアポトーシス誘導作用をもつがん抑制遺伝子産物(RBタンパク以外の)の分解が促進されていたが、RBタンパクの場合とは異なり、ガンキリンは、そのがん抑制遺伝子産物とは複合体を形成していなかった。しかし、ガンキリンはこのがん抑制遺伝子産物の翻訳後修飾(リン酸化等)を抑制し、さらに、その細胞内局在を変化させた。次に、ヒト肝がんで発現レベルの上昇しているガンキリン自身の活性をその結合タンパクを過剰発現させて、抑制することができないかということを検討した。酵母の2-hybrid法により、同定したガンキリン結合タンパクはガンキリンのがん化能等を抑制することがわかった。あわせて、肝がん細胞により効率的に発現させるレトロウイルスのプロモーター領域を解析し、これらアンチガンキリン分子の効果を検討した(Gene Therapy 2002)。その機序は不明であるが、肝がんでのアンチガンキリン療法の一系となりうる可能性がある。
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