一般に癌の発育・浸潤ではマトリックス分解酵素(MMP)が強く関与している。今回、肝細胞癌で血中のMMPおよびその阻害因子(TIMP)の臨床的意義を検討するとともに、肝癌組織でのMMPs、TIMPsの発現についても免疫染色で検討した。血中のMMPsについては、MMP-1、pro MMP-1、active MMP-2、total MMP-2、MMP-3、MMP-7、TIMP-1、TIMP-2を検討した。その結果、すべてのマーカーが肝硬変に比べて肝細胞癌で上昇し、腫瘍径、結節数、門脈塞栓、分化度などの所見と少なからず関連していたが、その程度は全体的に小さかった。ただ、血清TIMP-1は腫瘍径、結節数、門脈塞栓、分化度のいずれとも密接に関連し、肝癌の病態把握に有用であることが示された。外科的切除肝癌組織を用いてMMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-7、MMP-9、TIMP-1、TIMP-2の発現を検討したが、癌部と非癌部でこれらの発現に明らかな差はなく、肝癌細胞自体セこれらMMPs、TIMPsが産生されている可能性は低い。
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