研究概要 |
TGF-βは肝再生では2峰性の発現が知られており、後期の発現は増殖停止シグナルのみならず、増殖後の組織再構築に必要な細胞外マトリックス再構築にも働いているとされる。再生早期の一過性のTGF-βの作用の意義は明らかでない。肝再生での細胞外マトリックス再構築の重要性が指摘されている。Immediately-early geneの一つCCN family (CTGF、cyr61、nov)の遺伝子産物が、組織修復の早期で、細胞外マトリックス再構築を担っていることが指摘されている。CTGFはTGF-βによって発現が誘導され、線維化の維持に重要と指摘されている。我々は、部分肝切除やD-ガラクトサミン肝障害後の肝再生時にCTGFの遺伝子発現がどのように変化するかをまず試みた。CTGF、TGF-β1、I型コラーゲンのmRNAの発現をRNase protection assayで定量した。 部分肝切除時には、TGF-β1、I型コラーゲンは2-6時間後と12-48時間後に発現が増強された。CTGFは6時間後に増強したが、その後コントロールレベルまで低下した。In situ hybridizationと肝星細胞の培養実験から、肝臓の類洞にそってCTGFを発現する細胞は星細胞であろうと推測された。D-ガラクトサミンの肝障害後にはCTGFは2-96時間で増強し、そのうち6-12時間で小さなピークと24時間でのメインピークを認めた。TGF-β1、I型コラーゲンは、今度はCTGFと同様の増強パターンを認めた。部分肝切除では線維化を伴わない再生であるので後期のCTGF発現がなく、D-ガラクトサミンの肝障害後では壊死や炎症のためTGF-β1発現が高く、CTGFの発現が遷延し、一過性の線維化を伴う再生となるのではないかと考えられた。 CCN family (CTGF、Cyr61、Nov)の患者肝組織での発現は、肝癌患者手術標本の癌部と非癌部組織から調製したRNAサンプルを用いて測定した。癌部ではCTGF、cyr61、novは各々26.1%,73.9%,73.9%で非癌部では4.3%,69.6%39.1%であり、NovとCTGFは癌部に高い傾向にあった。NovとCTGFは腫瘍の発育に関連があることが示唆された。
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