研究概要 |
これまで我々は、インターロイキン8(IL-8)が胃癌における重要な血管新生因子のひとつであることを報告している。今回、IL-8が胃癌において血管新生のみならず、他の起序で胃癌の増殖、進展に関与している可能性を明らかとするため、胃癌組織におけるIL-8レセプターの発現を検討した。 ヒト胃癌培養細胞株8株におけるIL-8レセプターA(CXCR-1)とIL-8レセプターB(CXCR-2)mRNAの発現をRT-PCR法で検討したが、すべての胃癌細胞株において、ほぼ同レベルで両レセプターmRNAを構成的に発現していた。胃癌手術材料を用いた免疫組織学的検討では、好中球や血管内皮細胞など、間質における細胞のみならず、ほとんどの胃癌細胞においてもIL-8レセプターA,Bの免疫活性が認められ、特に、リンパ管内に浸潤した癌細胞は強陽性を示していた。 癌転移に及ぼすIL-8の影響を調べるため、胃癌細胞株TMK-1細胞およびMKN-1細胞をリコンビナントIL-8(1.0ng/ml)で処理し、転移関連遺伝子発現の変化をNorthern blot法にて検討したところ、EGFR,VEGFおよびType IV collagenase mRNAの発現の増加が観察された。一方、E-cadherin mRNAの発現は、IL-8処理3時間後に発現の減弱がみられた。invasion assayにおいても浸潤能の亢進が確認された。 本研究により胃癌細胞がIL-8のみならず、そのレセプターも発現していることが明らかとなり、IL-8は胃癌細胞による癌転移関連遺伝子の発現を調節していることから、胃癌細胞から産生されたIL-8は単にパラクライン的に血管新生に作用するのみならず、オートクライン的に働き、胃癌の増殖および進展に関与していることが示された。
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