研究概要 |
1.我々は胃癌細胞がinterleukin(IL)-8を発現し、血管新生を誘導することを報告している。胃癌細胞はIL-8のみならず、そのレセプターも発現しており、外因性IL-8を胃癌細胞に作用させることにより癌転移関連遺伝子(MMP-9,VEGF, EGFR)の発現が誘導された。胃癌細胞から産生されたIL-8は単にパラクライン的に血管新生に作用するのみならず、オートクライン的に働き、胃癌の増殖および進展に関与していることが示された。 2.IL-8の発現レベルが臨床病理学的事項と相関するか否かを検討するため、胃癌患者56例の胃癌組織およびその周囲の非癌部粘膜中のIL-8とVEGF蛋白レベルを測定した。腫瘍組織でのIL-8蛋白レベルは腫瘍進行度および脈管侵襲と、VEGF蛋白レベルは腫瘍進行度およびリンパ節転移とよく相関し、IL-8とVEGFの両者を高発現している症例では、低発現している症例に比し有意に予後不良であった。IL-8とVEGFは胃癌における独立した予後因子であり、ともに血管新生を介し、胃癌の増殖、転移に重要な役割を担っていることが明らかとなった。 3.サイトカインを介した胃癌と間質細胞の相互作用を明らかとするため、マクロファージ走化性因子のひとつであるmonocyte chemoattractant protein (HCP)-1の胃癌細胞での発現を検討し、胃癌細胞とマクロファージの相互作用について解析を行った。HCP-1免疫活性は主に胃癌細胞の細胞質に認められ、その発現強度はマクロファージの腫瘍内浸潤密度および血管密度と有意に相関した。胃癌細胞はMCP-1を発現することによりマクロファージを集積・活性化し、腫瘍血管新生に関与することが示唆された。
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