研究概要 |
生体内で最も強力な抗原提示細胞である樹状細胞(DC)がウイルス性肝炎や自己免疫性肝疾患、悪性腫瘍で機能異常があることを報告してきた。今回、実際の病変の現場である肝内のDCの単離を行い、その機能特性と病態による変化を解析した。 肝DCは、C57BL/6マウスから単離した。肝DCは、MHC class II, CD86の発現が弱いこと、抗原取り込み能が強いこと、異系同種T細胞幼若化補助能が弱いことより未成熟なDCであった。しかし、特異抗原を用いて抗原特異的免疫応答を検討すると、肝DCは抗原を取り込んだ後には抗原特異的な免疫応答を誘導できることを明らかにした。 次に、マウス肝炎モデルにおける肝DCの機能を解析した。肝炎発症時の肝DCの細胞表面マーカーの解析では、MHC-class II, CD86がコントロール群に比し有意に増強していた。また、異系同種T細胞に対する増殖能も増強していた。また、肝炎群では肝樹状細胞の抗原取り込み能はコントロール群に比し、低下していた。一方、抗原特異的な免疫応答を解析すると、肝炎群の肝樹状細胞は抗原特異的感作リンパ球に対する免疫応答が誘導できなかった。すなわち、肝炎発症時には肝樹状細胞が免疫応答を誘導する能力が失われていることが明らかになった。 以上から、肝樹状細胞は、未成熟な樹状細胞であること、抗原を取り込んだ後に成熟化して免疫応答を誘導する抗原提示細胞であること、またその機能が肝病態に関与していることを明らかにした。
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