今年度は主にex vivoの灌流系を用い、肝神経刺激のmediatorである物質を検索した。 1)ラットにガラクトサミン800mg/kgを腹腔内に投与して急性肝障害を惹起した。投与24時間後に麻酔下で開腹し、門脈よりKrebs-Henseleit緩衝液をベースとした灌流液で肝を灌流した。灌流液中に漏出してくる乳酸脱水素酵素(LDH)とアスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)をNecrosisの指標としてその変化を測定した。灌流開始後30分前灌流し、LDH、ASTの漏出が一定レベルまで落ち着いたところで交感神経伝達物質であるノルエピネフリンを門脈内に投与すると、LDH、ASTの漏出が一過性に増強し、以前に申請者らが観察した肝神経刺激による肝障害増強作用と同様の変化を引き起こした。この肝障害増強作用は、肝交感神経刺激時に産生が増加するエイコサノイドであるプロスタグランジンやトロンボキサンの投与時にはほとんど観察されず、エンドセリンの投与により認められた。以上の実験結果は、肝交感神経刺激による肝細胞障害増強作用には、エンドセリンが媒介物質として関与していることを示唆している。 2)肝組織のDNA断片化をTUNEL法にて検出すると、ガラクトサミン投与後の障害肝において断片化の増加が認められることから、上記の灌流実験においてみられた肝障害増強作用においてもアポトーシスの増強している可能性が示唆されるため、今後詳細な検討を行いたい。 3)ラット肝から、肝細胞および非実質細胞をそれぞれ分離培養し、数日間形態変化を観察した。また、非実質細胞についてはマクロファージに対する抗体でKupffer細胞を確認した。
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