研究概要 |
従来、HBVはその表面蛋白に対する血清学的な抗体反応によってadr、adw、ayr、aywの4つの主要なsubtypeに分類されていたが、わずか1つのアミノ酸の変異で見かけ上別のsubtypeの反応性を示すことが示されてから、現在ではウイルスの遺伝子配列の系統解析からA型からG型までの7つのgenotypeに分類されることになった。しかし、genotypeは遺伝子配列による分類のため、広い地域での多数の検体を測定する場合はいちいち配列を決定しなければならないため、費用や時間の問題から容易には検討できなかった。 そこで我々は、PCR産物を制限酵素を用いてそれぞれのgenotypeに分類する方法を考案し、比較的容易に多検体処理が可能となったため、その方法を用いて、北海道から沖縄までの、全国12大学に通院中のHBs抗原陽性患者血清720例(男:女=469:251,平均年令=43.6±14.9才)について検討した。それぞれの患者からはInformed consentを得て採血し、その臨床所見も収集した。 その結果、A型が1.7%、B型が12.2%、C型が84.7%、D型が0.4%、混合型が1.0%であった。しかし地域別に見ると、沖縄でB型が60.0%、また東北で22.9%と他地域と比べB型が多く見られた。B型とC型との臨床所見を比較したところ、B型では有意にHBe抗体陽性例が多く、HBV DNAも低値であった。 以上から日本では大多数がC型であるが、南北にB型が多く見られる地域があり、また両者で臨床所見の違いが認められることが示された。
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