研究概要 |
全国、北は北海道大学医学部から、南は琉球大学医学部までの12施設から全720症例の検体を集め、当方でHBVのgenotypeを測定したところ、HBV genotypeA, B, C, Dは各々1.7%,1.2%,84.7%,0.4%で、混合型が1.0%であった。このことはgenotype Cが本邦では主で、genotype Bが従であると思われた。しかし、沖縄や東北地方ではgenotype Bが多く認められ、これは日本民族の起源に関係し、縄文人がgenotype Bを、弥生人がgenotype Cを本邦に持ち込んできたためと推定された。また、従来日本に存在しないといわれていたA型とD型とまた混合型につき全塩基配列を決定し、比較したところ、genotype AとDは欧米の配列に近似し、欧米から最近持ち込まれたと推定された。混合型については、塩基配列の検討の結果、HBV genotype間のco-infectionやrecombinationが考えられたが、今後さらに症例を増やして検討する必要があると思われた。 また、これらの検体でHBV genotypeの臨床的意義をみるために、HBV genotypeとこれらの検体の臨床データと比較したところ、HBVの増殖に関与しているHBe抗原の陽性率がgenotype Cに多かった。HBe抗原はCoreprcmoterとprecore領域の変異によりcontrolされるため、それらの変異とHBV genotypeの関係をみるためにCase control studyを行ったところ、core promoterの変異がgenotypeCに有意に多く認められた。このことは、genotype Cではcore promoterの変異が起こりやすく、その結果HBe抗原の産生に変化がおこり、肝硬変、肝細胞癌への進展を促進すると思われた。
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