我々はラット膵における新規のセリンプロテアーゼをクローニングし、これをChymopasinと命名した。Western Blottingにより、ラット膵ホモジェネートや膵液胆汁に発現しており、消化酵素と推定された。 予想されるアミノ酸配列との相同性から、このセリンプロテアーゼはヒトにおけるchymotrypsin-like enzyme-1(CTRL-1)に相当するものと考えられた。ヒトCTRL-1は1997年にJanne E.らにより報告された新規の膵消化酵素である。 Chymopasinの基質特異性を検討するため、大腸菌を用いてリコンビナント蛋白を作成し、セリンプロテアーゼに対する合成基質各種を用いて活性を検討した。結果キモトリプシンと同様の基質特異性を示すことが判明し、合成基質に対する活性の有無のみではChymopasinとキモトリプシンは判別できないと考えられた。便中キモトリプシンテストやBT-PABAテストで使用される合成基質とは発色基が異なるだけの基質(それぞれSuc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCA、Benzoyl-tyrosil-PABA)に対してもChymopasinが活性を有することが判明した。したがって、これら膵外分泌機能検査の結果はキモトリプシン活性のみならずChymopasinのHomologueであるCTRL-1の活性も関与している可能性がある。またリコンビナントChymopasinはGelatinase活性やFibrin分解活性も有しており、急性膵炎時に局所の傷害に関与するものと考えられた。
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