研究概要 |
野性株の中に変異株が微量に出現したという想定の元における我々のモデル実験において、野性株の1/1000量の変異株エピトープの混入で、著明にCTL誘導が障害されること。さらに残存するCTLの特異性において、野性株、変異株をともに認識するCTLが消失し、野性株エピトープのみを認識し、変異株エピトープを認識しないCTLへと、CTLのpopulationがシフトする事が明らかとなった。 そこで,本年は、既に変異株が野性株に置き換わってしまったと考えられる患者で、そうした事象が観察されるかを見た。 HLA B44に拘束されるHCV core内の88-96アミノ酸残基のエピトープがindex peptideと比較して、変異している患者を対象とし、野性株および変異株エピトープペプチドを用いCTL誘導を行った。アンタゴニズムを利用しCTL populationを解析すると、少なくとも本人の持つ変異株のみを認識してほとんど野性株を認識しないCTLと、変異株と野性株をともに弱く認識するCTL、野性株のみを認識するCTLの3種を認めた。しかし、現存の変異株エピトープで刺激した場合には、それに対する野性株エピトープによるTCRアンタゴニズムは認められない。 この患者に於いては、少数は存在するあるいはかつて存在したと考えられる野性株により増殖に関してのTCRアンタゴニズムが起き、TCRアンタゴニズムに感受性のある野性株、変異株双方を認識するCTL populationはほとんど増殖できていず、その結果、変異株刺激で本人の持つ変異株のみを認識するCTL populationだけが認められたと考えられた。
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