本年度は主に以下の3つの検討を行った。 1.ヒト胃粘膜からムチンを抽出し、ゲルろ過とセシウム塩密度勾配遠心法により精製した。3人分の検体より、胃体部側、幽門部側それぞれの精製ムチン標品を得た。さらに数人分の検体よりムチンを精製中である。 2.表層粘液細胞由来ムチンと深部粘液細胞由来ムチンを同定するために、コアタンパク質中の糖鎖の比較的少ない部分のオリゴペプチド(合成品を使用)を抗原にして抗体の作成を試みた。用いた合成ペプチドと特異的に反応する抗体を得たが、ムチンとの反応性についてはなお検討を必要としている。 3.分画した胃粘膜ムチンとHp(ATCC43504株)との接着を、既に確立した96穴プレートを用いたELISA法および新たに設置されたバイオセンサーを用いて測定し、Hpが接着する分子種の同定を試みた。先ずムチンのバイオセンサーチップへの結合条件を検討した結果、アミノキュベットにポリグルタルアルデヒド法を用いて固定化する方法が良い結果を与えることが明らかとなった。この方法で結合した胃体部ムチンおよび幽門部ムチンのHpとの結合を比較したところ、予想に反して胃体部ムチンに強い結合性が認められた。同様な結果はELISA法によっても得られ、現在その解釈を試みている。
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