研究概要 |
本年度は,ヒト胃ムチンを用いた解析を行う予定であったが,検体の入手が計画通りに行かなかったため,予定を変更して,ムチン糖鎖についての解析を,ラット胃ムチンをモデルとして行った。これは,ヒトと同様にヘリコバクター・ピロリ(Hp)が感染しうることが報告されていて,優れた実験モデルと考えられるスナネズミを用いた解析を念頭においてのことである。 1.これまでに,Hpと結合するムチン糖鎖を同定するための手段として,糖鎖の切り出し方法の検討を行った。さらに切り出した糖鎖からネオ糖脂質を合成し,それを用いて,ムチン糖鎖に対する単クローン抗体と反応する特定の糖鎖を同定できることを確認した。この結果は,Hpが認識するムチン糖鎖同定法への道を開くものと言える。しかしながら,ここで用いた単クローン抗体は,その認識する糖鎖が既に明らかなものであり,未知の糖鎖の場合も同様な解析ができるかは,明らかではなかった。そこで,認識する糖鎖の構造がまだ同定されていない単クローン抗体であるRGM21を用いて,エピトープ糖鎖を決定できるかどうかを検討した。その結果,RGM21抗体が認識する糖鎖が血液型H型を有するものであることを見いだした。このことは,本研究で確立した方法によってHpが認識するムチン糖鎖が同定可能であることをさらに強く支持した。 2.Hpが認識する主要なムチン糖鎖として,血液型関連糖鎖が考えられている。前項のRGM21抗体が認識する糖鎖の解析において,様々な血液型関連モデル糖鎖のネオ糖脂質を合成し,それを用いた。これらネオ糖脂質は,今後のHpが認識するムチン糖鎖の解析において,役に立つと考えられた。 3.これまでの結果をまとめ,未発表部分については論文化を計るとともに,これからの方向性について検討を行った。
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