研究課題/領域番号 |
12670516
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
北村 庸雄 順天堂大学, 医学部, 講師 (20231285)
|
研究分担者 |
藤田 敬子 東京都老人総合研究科, 分子病理, 助手 (00100131)
広瀬 美代子 順天堂大学, 医学部, 助手 (70266039)
池嶋 健一 順天堂大学, 医学部, 助手 (20317382)
|
キーワード | 老化 / 肝細胞 / 肝再生 / SMP30 / アポトーシス |
研究概要 |
SMP-30ノックアウトマウス(KO)およびワイルドタイプ(WT)のマウスからコラゲナーゼ灌流法により初代培養肝細胞を各々分離培養し、(1)BrdU labeling indexの算定によりepidermal growth factor(EGF)・hepatocyte growth factor(HGF)に対するDNA合成能を、(2)TUNEL法およびcaspase活性の測定により、TNF-α・actinomycin Dのアポトーシス誘導能を、(3)免疫蛍光抗体法を用いたgap junction構成蛋白(connexin 32)の発現により細胞分化能を観察し、それぞれKOとWTの間で比較検討した。また、カルシウム結合蛋白としてのSMP-30の役割を明らかにするため、画像解析装置を用い細胞内カルシウム動態を観察した。【結果】マウスより分離した培養肝細胞においてEGFおよびHGFの添加によってDNA合成能はWT・KOともに亢進したが、WTに比べKOでその増加は有意に低下していた。またTNF-αとRNA polymerase阻害剤であるactinomycin Dの同時添加によりアポトーシスが誘導されたが、アポトーシス陽性細胞率およびcaspase 3の活性はWTに比べKOで有意に高値を示した。さらに細胞間におけるconnexin 32の発現はWTに比べKOで低下していた。一方、phenylephrine刺激による細胞内カルシウムの上昇時、KOではWTに比べ高率にカルシウムオシレーションの発現が認められた。【考案】SMP 30の欠損により(1)増殖刺激に対するDNA合成能の低下、(2)アポーシスの誘導の亢進、(3)connexin 32の発現を指標とした細胞分化能の低下が認められた。またカルシウム結合蛋白であるSMP30の欠損による細胞内カルシウムシグナル伝達の相違が上記の細胞機能変化の制御に関わっている可能性が示唆された。【結語】SMP 30は肝細胞の増殖・分化・アポトーシスを制御する新しい因子であることが明らかとなり、老化にともなうSMP30の発現低下は高齢者における肝再生遅延機構の一部を説明し得る可能性が示唆された。
|