炎症の場での標的細胞と浸潤細胞のアポトーシスの調節のバランスは、炎症の開始起点とその進行に重要な役割を果たしている。AIMはマクロファージ(mφ)より分泌されるアポトーシス抑制物質と考えられている。また、実験肝炎において肝mφ/Kupffer細胞(KC)でAIM mRNAの発現が増強される。これらの事実に基き、本年度は以下の実験を行った。 肝mφ/KCにおけるAIMの発現と肝炎の関係を調べる目的で、AIM transgenicマウス(AIM-tg)とコントロールC57BL/6マウス(B6)に、P.acnes・LPSで誘発した急性肝炎を惹起し、AIMの機能を解析した。 方法(1)AIM-tg、B6にP.acnes 1mgを静注し7日後にLPS2.5μgを静注して肝炎を誘発した。B6でLPS投与前・後で経時的にAIM mRNAの発現をin situ法にて調べた。また、LPS投与8時間後の肝組織を用いてAIM-tg、B6でのAIM mRNAの発現を比較検討し、免疫染色にてmφ/KC細胞の局在を調べた。 結果(1)B6肝組織で肝炎誘発後、炎症の刺激により肝mφ/KC細胞でAIM mRMの発現の増強がみられた。(2)AIM-tgの肝では、炎症細胞浸潤部にmφの集族がみられ、これらのmφの集族部でmφのアポトーシスが抑制されている可能性が示唆された。(3)AIM-tg肝のmφ/KC細胞で、細胞内に貪食されたparticleの蓄積がみられ、AIMは炎症局所で、mφの貪食能を亢進させる可能性が示唆された。 以上より炎症局所でAIMはmφの貪食能を亢進させる可能性が示唆された。AIMを介した肝mφ/KC細胞の貪食能の亢進は、死細胞あるいは有害物質の排除に貢献している可能性が考えられた。
|