アルコールによる肝障害にアポトーシスの関与が示唆されてきているが、その機序として、アルコール代謝に伴って生じるアセトアルデヒドの増加、低酸素状態、活性酸素の産生や免疫学的な関与が想定されている。最近、アポトーシスにはmitochondria(Mt)が重要な役割を演じていることを示唆する成績が報告されるようになったきているが、我々もアルコール性肝障害ではMt-DNAのATPase regionをコードする領域にdeletionが起こることを明らかにしてきている。今回、アルコールによるMt-DNAのdeletionとアポトーシスの発現との関連性について検討を行なうことを企図したが、現在、雄性Wistar系ラット(合計60匹)をアルコールあるいはコントロールの液体飼料(オリエンタル酵母社)で飼育を行なっている。また、一部のラットを用い、アルコール性肝炎のラットモデル作成を行なっているが、現在のところ問題なく飼育されている。液体飼料で8週間飼育したラットの一部を用い、肝組織を電顕的に観察を行なったが、アルコール群ではMtの腫大、変形を強く認めており、本モデルは、Mtを中心としたアポトーシスの研究に十分適したモデルであることを確認し得た。したがって、本研究においてアルコールによるMt-DNAのdeletionとアポトーシスの関連性を解明し得ると考えている。
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