[目的]アセチルコリン(ACh)刺激時の開口放出におけるプロスタグランジンE_2(PGE_2)とNSAIDsの役割について検討した。 [方法]モルモット胃幽門腺粘液細胞における粘液顆粒開口放出をビデオ顕微鏡により観察した。NSAIDsとしてインドメサシン(Ind)及びアスピリン(ASP)を使用した。 [結果]Ca^<2+>調節性開口放出はACh(10μM)により最も大きな反応を引き起こした。Ind(10μM)は、AChにより活性化された開口放出頻度を約30-40%抑制し、その抑制効果は濃度依存性であった。ASP(10μM)もIndと同様にAChにより活性化された開口放出を約30-40%抑制した。PGE_2(1μM)はcAMPの集積を引き起こしてCa^<2+>-調節性開口放出を増強した。これは開口放出の最終段階過程(ATP-dependent primingとCa^<2+>-dependent fusion)を増強することにより引き起こされていた。PKA阻害薬(H-89、10μM)はAChにより活性化された開口放出を約30-40%抑制し、H-89存在下でIndを加えても開口放出の抑制効果に変化はなかった。一方Ind存在下でもPGE_2を加えることにより、AChにより活性化された開口放出は維持された。IndはAChによる細胞内Ca^<2+>濃度上昇を抑制しなかった。COX1阻害剤はNSAIDsと同様に開口放出を阻害した。 [結語]胃幽門腺粘液細胞では、NSAIDsは細胞内Ca^<2+>濃度には影響せず、PGE_2合成を阻害することによりcAMPの集積を抑え、その結果としてCa^<2+>-調節性開口放出頻度を抑制することが示された。 すなわち、Ca^<2+>調節性開口放出が活性化され、同時にCOX1を介したPGE_2によるオートクリンメカニズムによりこの開口放出はさらに増強、維持されていることが判明した。
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