研究概要 |
【目的】パイエル板のリンパ球を十二指腸粘膜下へ注入すると,M細胞を含んだパイエル板類似の組織がde novoに発生することが報告され,M細胞の形成とパイエル板由来のリンパ球との関係が注目されている。しかし,M細胞の形成,分化機構はまだ不明である。今回,家兎のM細胞の特異的マーカーである中間径フィラメント,vimentinに注目し,家兎パイエル板絨毛,小腸絨毛粘膜にて,vimentin陽性細胞の分布と超微形態学的にvimentinの細胞内の局在を検討した。【方法】vimentinモノクローナル抗体(V9,3B4)を用い,家兎小腸で免疫組織化学,免疫電子顕微鏡学的手法で検討した。【結果】vimentin陽性のM細胞はリンパ濾胞被覆上皮と同じ陰窩から発生した対側の絨毛側にも少数認められた。vimentin陽性細胞は上皮内遊走細胞以外に,パイエル板内の絨毛や小腸絨毛被覆上皮に散在性にvimentin陽性上皮細胞を認めた。光顕で,このvimentin陽性上皮細胞はワイングラス様形態をとり,小腸絨毛被覆上皮よりパイエル板内の絨毛上皮において多く認められた。免疫電顕ではvimentinフィラメントの細胞内分布は核周辺に多く局在し,核から放射状に認められた。このvimentin陽性上皮細胞は隣接する吸収上皮細胞に比べ,短く粗な微絨毛を持ち,ミトコンドリアは小さく,数が少ない。この超微形態学的特徴はcup細胞に一致していた。【結論】現在,cup細胞の役割は不詳であるが,小腸粘膜上皮では,vimentinはM細胞以外に,cup細胞の新しいマーカーとして有用であり,M細胞やcup細胞の発生分化を考える上で,極めて興味深い。
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