研究概要 |
現在、tacrolimus(FK506)やcyclosporineの免疫抑制剤のパイエル板での抗原物質の取り込みや輸送能における影響は不明である。本研究は、パイエル板のM細胞の蛍光ラテックス粒子の取り込み、輸送に及ぼす免疫抑制剤の影響を検討した。8週齢のNZW系家兎にtacrolimus(FK;3.2mg/kg/day),cyclosporine(Cs;10mg/kg/day)およびPBS(control)を3群に分けて、7日間経口投与した。絶食後、麻酔下に開腹し、パイエルを含む回腸ループに蛍光ラテックス粒子(直径0.5μm;1×10^<10>/ml)を注入し閉腹した。2時間後、回腸ループを摘出し、PLP液固定、凍結切片作成後、phalloidinで蛍光染色し、蛍光顕微鏡にてパイエル板リンパ濾胞の写真を撮影した。蛍光写真上で、濾胞を刷子縁層、さらに濾胞深部に向かって上皮層の厚さで、計4層(第1層;microvillus border,第2層;follicle epithelium,第3層;subepithelial zone,第4層;deep subepithelial zone)に分割した。各層の面積をVideoplan III analyzerにて算出し、単位面積あたりの粒子の数を各層で比較検討した。各層での粒子密度や第3層/第2層、第4層/第2層間の粒子の輸送率についても検討した。また、第2層での、MHC-II、CD43細胞の分泌密度を各グループにて比較検討した。FKやCs投与群では、control群に比べ、各層において、粒子密度は低値を示した。また、第2層から第3、4層への粒子の輸送もcontrol群より少なかった。FKとCs投与群の間には粒子の取り込み、輸送に有意差は認められなかった。MHC-IIやCD43陽性細胞の第2層での分布密度はcontrol群よりもFKやCs投与群では低値を示した。FKやCsの免疫抑制剤はM細胞や免疫抑制細胞によるラテックス粒子のリンパ濾胞への取り込みや輸送能を減少させ、リンパ濾胞被覆上皮へのMHC-IIやCD43細胞の遊走を減少させることが示唆された。
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