研究概要 |
Bart Stealsらはperoxisome proliferator-activator receptor (PPARα) activatorがNF-κBのシグナルを抑制することでcyclooxgenase-2 (COX2)の転写活性を抑えることを報告した。最近ではフェノフィブレートなどPPARαactivatorが各種細胞内での炎症の活性化,脂肪の変性・蓄積を抑制することも報告されている。 肝臓においては酸化ストレスを介して、肝細胞が脂肪変性を来たし、ひいては肝発癌へ進展することも示唆されている。組織学的にも前癌病変といわれるC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎・肝硬変や早期肝癌に於いても組織中に脂肪蓄積をみることがあり、C型肝炎ウイルスと肝細胞内脂肪変性,肝発癌との深い関与が推測される。 一方、C型肝炎ウイルス蛋白の一部であるcore蛋白はPPARαに結合することが知られており,core蛋白自らが肝細胞内の脂質代謝に影響する可能性も考えられる。 そこで、本年度は分化度が異なる肝癌細胞株を用いてin vitroによるフェノフィブレートの脱分化抑制効果を検討する予定であったが,core蛋白transgenic(whole body)マウスに直接フェノフィブレートを投与したin vivoの実験系を確立できたので、これらのマウスの肝臓を採取し、併せてフェノフィブレート非投与マウスからも肝組織を採取し、以下のような実験を行っている。1)数百種類の脂肪成分解析が可能であるlipomicsを導入して、肝臓内の脂質成分の変化を解析する。2)肝の超微形態観察を含む組織的検討を行う。3)Western法などを駆使して肝細胞の細胞周期関連因子の発現変化を検討する。これらの点を解析しC型肝炎ウイルスと肝細胞内脂肪変性,肝発癌との関連を現在検討中である。
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