研究概要 |
我々が、遺伝子不安定性に関与する細胞蛋白の候補として単離したY-box binding protein familyに属するdbpA(申請時点ではYB-2と称していたもの)について、以下のデータを得た。 1.申請書作成当時、大腸菌にて発現させたdbpAにnuclease活性を認めた。しかしその後、分画・精製を繰り返したところ、nucleaseの分画とdbpA分画が一致せず、dbpAのnuclease活性は、dpbA蛋白そのものの活性ではなく、それと結合する蛋白か、あるいは単なる精製時のcontaminationによるものであることがわかった。そこで、nuclease活性のないdbpA分画を用いて、in vitro strand exchange assay(Muller et al.DNA-protein interactions.(Kneale Ed.)Humana Press,pp.413-423,1994)を行ったところ、RecAに比べて活性はかなり弱いものの、strand exchange活性を認めた(投稿中)。 2.Y-box binding proteinは細胞回転が亢進しているときにその発現が亢進する。そこでdbpA遺伝子の転写制御領域を調べたところ、転写開始部の上流-5塩基の位置にあるTをGに置換するとプロモーター活性が約2倍に上昇した。実際にこのような一塩基置換が、肝癌の臨床材料で認められるかどうか調べたとことろ、51症例の肝癌のうち3症例に同じ置換が認められた。うち1例はsomatic mutationによるもであった。残りの2例はSNPの可能性が高いが、同一患者の正常組織の入手が不可能であるため確定はできていない。さらに、我々はサウスウェスタン法にて、1塩基置換のある配列に特異的に結合する蛋白があることを確認しており(Hayashi et al.投稿準備中)、現在、その単離を試みている。
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