研究概要 |
我々が、遺伝子不安定性に関与する細胞蛋白の候補として単離したY-box bhding Protein familyに属するdbpAについて、以下のデータを得た。 1)大腸菌にて発現させたdbpAに、弱いながらstrand exchange活性を認めた。最近、同じファミリーに属するYB-1が、DNA及びRNAのアニーリングを促進させるという報告がなされ(JBC276:44841-44847,2001)、同ファミリーの蛋白が相同組み換えに関与している可能性が、他施設からも示唆された。 2)我々が作製したdpbAのC末に対する抗体は、大腸菌で発現させたdbpAを感度よく検出すした。現在、各種癌組織におけるdbpAの蛋白レベルでの発現状態を調べている。(mRNAレベルでは、肝癌組織においてその発現が亢進していることを確認している。) 3)マウスdbpA遺伝子を肝臓で特異的に発現するトランスジェニックマウスを作製した。現在、肝発癌に対する感受性の変化を調べている。 4)dbpAと同じY-box binding Protein familyに属するYB-1に対する抗体を用いて、各種ヒト組織を染色したところ、既報告のように癌組織で発現が亢進していることのほかに、正常組織の一部(消化管上皮組織等)にも発現していることを確認した。 5)dbpA遺伝子の転写開始部の上流-5塩基の位置にあるTをGに置換するとプロモーター活性が約2倍に上昇した。実際にこのような一塩基置換が、肝癌の臨床材料で認められるかどうか調べたとことろ、51症例の肝癌のうち3症例に同じ置換が認められた。うち1例はsomatic mutationによるもであった。さらに、我々はサウスウェスタン法にて、1塩基置換のあるプロモーター配列に特異的に結合する25kDa蛋白があることを確認しており)、現在、その単離を試みている。
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