研究概要 |
我々はこれまでに好酸球において、接着分子やケモカインレセプターの重要性を報告してきた。しかし肥満細胞でのこれらの分子の発現・制御に関しては報告が少ない。一方でeotaxinやIL-8といったケモカインは炎症局所で発現・産生が確認され、炎症細胞の遊走・集積に重要な働きをしている。これまでの好酸球の検討に基づいて肥満細胞においても検討した。そこで前年度までに我々は臍帯血培養肥満細胞の分離を確立し、そのICAM-1,βインテグリン群の発現と制御を確認した。今年度はさらにケモカインレセプターの発現を確認した。臍帯血由来培養肥満細胞ではeotaxinのレセプターであるCCR3は発現が認められなかったが、IL-8のレセプターであるCXCR1、CXCR2は発現がmRNAあるいは表面蛋白発現として認められた。またIL-8によりカルシウム流入、遊走作用が惹起されることを確認した。肥満細胞の組織への遊走、活性化にはIL-8のCXCR1とCXCR2を介した作用が重要であると考えられた。好酸球においてはすでにCCR3を中心としてケモカインレセプターの発現を確認していたので、まず分離好酸球を用いてPMA、イオノマイシンやIL-5などの好酸球に強い作用を持つサイトカインで刺激を行い、ケモカインレセプターの発現を検討したが、発現に変化を及ぼすことはなかった。またアレルギー患者と健常者の比較においてもその発現に差は認められなかった。さらに我々は気道上皮細胞におけるCCR3の発現とその機能について発表しており、このCCR3を介したシグナルがNGFと同様に成長因子の一つであるEGFのレセプターのリン酸化を抑制することにより強く抑制されることから、成長因子の作用とケモカインレセプターの関係に注目し検討している。これをふまえ肥満細胞においてのサイトカイン、ケモカイン、成長因子によるケモカインレセプターの発現の制御を検討中である。
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