研究概要 |
好酸球とともに肥満細胞はアレルギー性炎症での重要な炎症細胞である。一方で接着分子がアレルギー性炎症を形成する様々な細胞の遊走・活性化に重要である。またそれに加えてeotaxinやIL-8などのケモカインはアレルギー性炎症局所で発現や産生が確認され、炎症細胞の遊走・集積に重要な働きをしている。我々はこれまでに好酸球において、これらの分子が重要な役割を果たしていることを報告してきた。しかしながら肥満細胞に関しては十分には明らかになっていない。これまでの好酸球の検討に基づいてまず我々は肥満細胞での接着分子の発現とその制御について検討した。臍帯血から得られた単核細胞をIL-6、SCF (stem cell factor)存在下で培養することにより得られた臍帯血由来培養肥満細胞を用いた。この肥満細胞においてICAM-1,CD11b, CD11a, CD18,CD49dの発現が認められた。それに対してVCAM-1は発現が認められなかった。さらにICAM-1の発現はPMAで24時間培養することにより増強し、デキサメサゾンとの24時間共培養により低下することを確認した。さらにこの培養肥満細胞ではeotaxinのレセプターであるCCR3は発現が認められなかったが、IL-8のレセプターであるCXCR1、CXCR2は発現がmRNAあるいは表面蛋白発現として認められた。またIL-8によりカルシウム流入、遊走作用が惹起されることを確認した。CCR3発現の制御に関してはまず分離好酸球を用いて様々な刺激により検討したが、変化はなかった。またアレルギー患者と健常者においても差は認められなかった。さらに我々は気道上皮細胞におけるCCR3の発現とその機能について発表しており、このCCR3を介したシグナルがNGFと同様の成長因子の一つであるEGFのレセプターのリン酸化を抑制することにより強く抑制されることから、成長因子の作用とケモカインレセプターの関係に注目し検討している。これをふまえ肥満細胞においてのサイトカイン、ケモカイン、成長因子によるケモカインレセプターの発現の制御を検討中である。
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