今年度の本研究の目的は、気管支喘息(以下喘息)の重症化・難治化の主な原因と考えられる気道壁線維化(気道壁リモデリング)を有するマウスモデルを作成し、その病態を詳細に検討することにあった。まずBalb/cマウスに5日間の間隔でオブアルブミン(OVA)を腹腔内に投与することでOVAに対する感作が成立した。感作成立後、低濃度のOVA(0.05mg/ml)を連日30分間、4週間吸入させ、吸入後1、3、7、14、21、28日後にメサコリンに対する気道反応性、気管支肺胞洗浄液中の細胞分画と各種サイトカイン産生量を測定した。また、気道壁線維化(気道壁リモデリング〉の評価を気管ならびに肺組織におけるコラーゲン量をエラスチカ-マッソン染色にて組織学的に、さらに肺組織中のハイドロキシプロリン量を測定し定量的に行った。以上の結果、気道反応性はOVA吸入後3日で亢進を認め、吸入後7日から28日まで同程度の気道反応性亢進の持続を認めた。気管支肺胞洗浄液中の細胞総数は、OVA吸入後3日で増加を認め、気道反応性亢進と同様に7日から28日まで細胞総数増加と好酸球増加の持続を認めた。気管ならびに気管支周囲の線維化と肺組織中ハイドロキシプロリン量はOVA吸入14日目から増加し、28日まで増加の持続を認めた。以上の結果、OVA吸入によるアレルギー性気道炎症の持続が気道壁線維化(気道壁リモデリング)と気道反応性亢進の持続に関与していると考えられ、このモデルは喘息の重症化・難治化の主な原因と考えられる上記変化を有する喘息患者の病態の特徴を有していると考えられる。従ってこのモデルは気道壁線維化(気道壁リモデリング)を有する重症喘息患者の病態を詳細に検討するのに非常に有用であり、さらに今後このモデルを用いて気道壁リモデリングが治療によって可逆的変化であるかどうかを検討する予定である。
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