気道壁リモデリング、特に気道壁線維化は気管支喘息の重症化・難治化に関与することが報告されているが、この変化が治療により改善するかどうかはいまだ不明である。この点を明らかにすることは今後の喘息治療において非常に重要であることから、われわれは平成12年度で気道壁線維化を有するマウス喘息モデルを作成し、平成13年度においてこの気道壁線維化を有するマウス喘息モデルを用いて、この気道壁線維化と気道反応性亢進、気道炎症が治療により可逆的であるかどうか検討した。まず、Balb/cマウスをオブアルブミン(OVA)腹腔内投与で感作後、ステロイド薬であるデキサメタゾンの腹腔内投与下で連日30分間OVAを吸入させ、14日後の気道壁線維化、気道炎症、気道反応性に対するステロイド薬の抑制効果を検討した。さらに、OVA感作マウスに連日OVAを吸入させて気道壁線維化が成立した14日目からOVA吸入下でデキサメタゾンを腹腔内投与して、既に成立した気道壁線維化がステロイド薬で改善するかどうかも検討した。以上の結果、デキサメタゾンは、OVA吸入開始と同時に投与した場合、OVA吸入14日目の気道線維化、気道炎症、気道反応性亢進を濃度依存性に有意に抑制した。さらにデキサメタゾンは、気道線維化が既に成立した14日目からOVA吸入下で投与した場合でも濃度依存性に気道壁線維化、気道炎症、気道反応性を有意に抑制した。従ってわれわれの作成した気道壁線維化を有するマウス喘息モデルにおいて、最も抗炎症作用の強いステロイド薬は気道壁線維化の抑制ならびにその吸収作用を示したことから、喘息の重症化・難治化に関与する気道壁線維化は治療により可逆性である可能性が示唆された。
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