研究概要 |
1.マウスブレオマイシン肺線維症モデルにおける内因性HGF発現の検討 肺傷害とその修復機転における内因性のHGFの役割について検討した。我々の基礎的検討および過去の報告ではブレオマイシン肺線維症を長期に観察すると大体50日後には肺線維症の組織所見はかなり軽減し、肺のコラーゲン量を反映するhydroxyproline量もほぼプラトーに達する。我々はこの時期には修復因子であるHGFの発現は高まっているのではないかという仮説を立て研究を施行した。マウスにブレオマイシンを経気管的に投与して肺傷害を引き起こし、投与後3,7,14,28,42,56,84日後の肺を取り出し、いくつかの群に分け、組織標本の作成、蛋白を抽出しELISAにてHGFの定量、hydroxyprolineの定量、RNAを抽出し、cDNAに変換してRT-PCRを行い遺伝子の発現の検討などを行った。内因性HGFはブレオマイシン投与後14日まで増加し、コントロール(生食投与群)の2.6倍にも達した。その後は漸減したが84日後でもコントロールの1.8倍と有意に高い値を示し、この時期でも肺の修復が盛んに起こっていることが示唆された。またhydroxyprolineは7日目から急激に増加し、28日ではコントロールの1.3倍になったがその後も徐々に増加し、84日ではコントロールの1.5倍であった。この結果は肺の線維化がゆっくりではあるが、84日たっても進行していることを示唆した。 2.マウスブレオマイシン肺線維症モデルにおける内因性TGFβ-1発現の検討 一方肺線維化の指標であるTGFβ-1濃度(気管支肺胞洗浄液中)を経時的に測定した。7-14日後がピークとなり、HGFと同様の変化を示したが、HGF/TGFβ-1比はhydroxyprolineと有意に逆相関した。
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