アレルギー性気道炎症における気管支上皮細胞のケモカイン発現調節:Th2サイトカインによるエオタキシン及びTARCの選択的な発現誘導.

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12670551
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 滝沢 始 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (80171578)
• 研究分担者: 出崎 真志 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 ; 岡崎 仁 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (80261973) ; 高見 和孝 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 ; 河崎 伸 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
• キーワード: 気道上皮細胞 / サイトカイン / 遺伝子調節 / 転写因子 / Th2サイトカイン / アレルギー性炎症 / 気管支喘息 / 治療薬剤

研究概要

気管支喘息をはじめとするアレルギー性気道炎症の病態形成に、気道上皮細胞が積極的に関与することが、我々を含めた多くの研究により明らかとなってきた。我々は、ヒト気管支上皮細胞が、なぜ疾患や病態に応じて、ある種の炎症性サイトカイン/ケモカインを優位に発現するのかを分子論的に解明することを目的に、今年度はIL-13刺激下に誘導されるケモカインであるエオタキシンと、TNFalphaをはじめとする各種刺激により誘導されるケモカインIL-8を対象として、その遺伝子発現における転写因子の動態を検討した。
気管支ファイバースコープ下に得られた正常末梢気管支上皮細胞と細胞株Bet1Aを用い、IL-1β,TNFα,IFNγあるいは、Th2サイトカイン(IL-13)、またはこれらの組み合わせを添加した。その結果、IL-8は既報のようにIL-1β,TNFαにより、そのタンパク産生、mRNAの発現ともに増強された。一方、この系にIL-13を添加すると、有意にその発現が抑制された。IL-13刺激は、用量依存的にエオタキシンの発現を増強した。これらに一致して、IL-8の遺伝子発現に重要な役割を演じる転写因子のひとつNFκBの活性化への影響をゲルシフトアッセイで検討した。その結果、IL-13添加は、その活性化を抑制することが観察された。一方、IL-13は、エオタキシンの遺伝子のプロモーター領域にその存在が確認されているsignal transducers and activators of transcription(STAT)-6の活性化(リン酸化)を誘導した。この系においてNFκB阻害作用をもつN-acetyl cysteineは、IL-8産生は抑制したが、エオタキシンの産生には影響を及ぼさなかった。以上から、ヒト気道上皮細胞のサイトカイン/ケモカインの遺伝子発現は、その刺激因子により特異的なシグナルを介して調節されていることが示唆された。来年度は、さらにその詳細を検討するとともに、TARCについても検討する。また、アレルギー疾患治療薬剤の作用についても検討する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Abe S.,Takizawa H.,Sugawara I.,Kudoh S.: "Diesel exhaust (DE) induced cytokine expression in human bronchial epithelial cells : A study with a new cell exposure system to freshly generated"Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.. 22. 2960-303 (2000)
• [文献書誌] H.Takizawa,M.Tonaka,K.Takami,T.Ohroshi,K.Iro,M.Satoh,Y.Okada,F.Yamasawa,A.Uneda: "Incrased expression of Inflammatory mediators in small airway epithelium from tobacco smokers,"Am.J.Physiol.. 278. L906-913 (2000)
• [文献書誌] H.Takizawa,S.Abe,T.Ohtoshi,S.Kawasaki,K.Takami,M.Desaki,I.Sugawara,S.Hashimoto,A.Atama,K.Nekabara,S.Kudoh: "Diesel exhaust particles (DEP) upregulate expression of intercellular adhesion molecule (ICAM)-1 in human bronchial epithelial cells."Clin.Exp.Immunol.. 120. 356-362 (2000)
• [文献書誌] M.Desaki,H.Takizawa,T.Kasama,K.Kobayashi,Y.Morira,K.Yamamoro: "Nuclear factor-kappa B activation in silica-induced interkukin 8 production by human bronchial epithelial cells."Cytokine. 12. 1257-1260 (2000)
• [文献書誌] H.Tokizawa,M.Tanaka,K.Takami,T.Ohtoshi,K.Iro,M.Saroh,Y.Okada,F.Yamasawa,A.Umeda.: "Increased Expression of Transforming Growth Factor-B1. in small Airway Epithelium from Tobacco Smokers and Patients with Chronic Obstructive Pulmonry Disease (COPD)."Am J Respir Crit Care Med. (in press).
• [文献書誌] S.Kawasaki,H.Takizawa,K.Takami,M.Desaki,H.Okazaki,T.Kasama,K.Kobayasa,K.Yamamoto,K.Nakabana,M.Tonaka,M.Sagai,T.Ohroshi: "Benzen-extracted components are important for the major activity of Diesel exhaused partilees (DEP) : Effect on IL-8 gene expression in human bronchial epithelial cells."Am.J Repir Cell Moll Biol. (in press).
• [文献書誌] 滝沢始,高見孝和,大利隆行,幸山正,河崎伸,出崎真志,中原一彦,山本一彦,田中満,: "『炎症』慢性気道炎症におけるサイトカイン/ケモカインと成長因子."日本炎症学会. 4 (2000)
• [文献書誌] Takizawa H,Tanaka M,takami K,Ohroshi T,Okada Y,Yamasawa F,Umeda A,Nakahara K: "Approach to the peripheral airway epithelial Cells by an ultrathin bronchoscope."日本気管支学会.. 4 (2000)