研究概要 |
肺胞マクロファージにおける核内ホルモン受容体の発現と機能に関して研究をおこない、以下の結果を得た。 I.ヒト肺胞マクロファージにおける25-hydroxyvitamin D3 1α-hydroxylaseeの発現 平成12年度は、気管支洗浄液(BAL)で得たヒト肺胞マクロファージ中の1αhydroxylase-mRNA量をRT-PCRで定量的に測定し、サルコイドーシス患者で有意に増加していること、そのmRNA量は血中25(OH)D3/1,25(OH)2D3濃度比と正相関し、サルコイドーシスの活動性とも関連することを見出し報告した(Am J Med 110:687-693,2001)。平成13年度は種々の呼吸器疾患を調べる中で、肺癌患者において非癌患者より約2倍1αhydroxylaseの発現が高まっていることを見出した。サルコイドーシス患者と同様、血中25(OH)D3/1,25(OH)2D3濃度比と正相関を示したが、カルシウム代謝系の指標とは関連しなかった。喫煙歴、肺癌組織型などとは関連しなかったが、進行度と関連する傾向が見られた。 II.ヒト肺胞マクロファージにおけるPPARγの発現と機能 ヒト肺胞マクロファージの核内ホルモン受容体の発現を調べ、peroxisome proliferator-activated receptor(PPAR)γの発現が特に高いことを確認した。PPARγの内因性リガンドである15d-PGJ2を添加すると、LPS誘導TNFα産生は抑えられ、貪食能に関係するCD36の発現が亢進した。肺胞マクロファージの好中球貪食能を測定したところ、15d-PGJ2添加で有意に増強した。肺胞マクロファージのPPARγは、サイトカイン産生を抑制し、CD36による好中球貪食能を高めることによって、抗炎症性に働いていると考えられた。
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