研究概要 |
1)TGF-βによる培養細気管支上皮細胞のアポトーシス誘導とカスパーゼの関与。 TGF-β1は用量依存的にCaspase3の活性化を介して、培養細気管支上皮細胞をアポトーシスに誘導した.汎カスパーゼ阻害剤(Z-VAD.FMK)はそのアポトーシスを有意に抑制した. 2)TGF-βによる培養細気管支上皮細胞のアポトーシス誘導におけるアポトーシス関連因子の発現の検討。 同様の実験系において、anti-apoptotic factor(bcl-2,bcl-XL,FLIP,IAP1,IAP2,)、pro-apoptotic factor(p53,BAX,FADD)、CDK inhibitor p21、p27の蛋白発現を経時的に観察すると、p21はTGF-β1処理により蛋白量が減少した.この現象にはcaspaseの直接の分解は関与していなかった.P21をin vitroでトランスフェクションすると、TGF-β1のよるアポトーシスは有意に抑制された. 3)Fas signalingへのTGF-βの関与。 抗Fas抗体による同細胞のアポトーシスについてはすでに報告したが、TGF-β1を前処理することで、このアポトーシス誘導効果は増強された.P21をin vitroでトランスフェクションすると、caspase3の活性化が抑制され、アポトーシスを抑制した. これらの結果よりTGF-βはp21の蛋白量減少を介して間接的にcaspase3を活性化し、Fas ligationによる細気管支上皮のアポトーシスを増強すると考えられた.このようにTGF-βは肺線維症の発症において、従来から指摘されているような間質の増生作用に加え、直接肺上皮細胞を障害し、肺線維症の発症機序に深く関与していると考えられる.またTGF-βとFas signalingのリンクにp21が重要な役割を演じていることは、今後の肺線維症の治療を考える上で興味深い.
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