アセトアルデヒド刺激による気管支の収縮を、肺癌患者より摘出された正常部分気管支組織を用いて圧トランスデューサーで測定したところ、明らかな収縮を認めた。RIA法による測定で、アセトアルデヒド添加後培養上清中には有意なヒスタミンの上昇を認めたが、トロンボキサン及びロイコトリエンの上昇は認めなかった。添加前後の培養上清中TNF-αを測定したが測定感度以下であった。 アセトアルデヒド添加前の気管支組織と、添加後の収縮力測定後の気管支組織標本に対して、ヒトトリプターゼ及びNFκBに対する免疫染色を行った。添加前後の組織像を比較すると、添加後の組織ではトリプターゼ陽性細胞数の著明な減少を認めており、アセトアルデヒド添加によるヒト肥満細胞の脱顆粒が証明された。添加前の組織では細胞質がNFκB陽性に染まっていたが、添加後の組織では核内が陽性に染まっており、NFκBの核内移行が示された。このため、アセトアルデヒド刺激によりNFκBが活性化することが示唆された。 肺癌患者摘出標本の正常部分肺実質をコラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、DNA分解酵素等を含む溶解酵素を用いて酵素的に溶解した後、比重遠心法により顆粒球を分離し、この顆粒球から免疫磁気ビーズ法により抗ヒトc-kit抗体を用いてヒト肥満細胞のみを分離した。 分離したヒト肥満細胞を用いて、無刺激培養とアセトアルデヒドを添加して培養した群の上清中ヒスタミンをRIA法にて測定、比較したところ、アセトアルデヒド添加群の培養上清ではヒスタミンの著明な上昇を認めていた。 このため、アルコール誘発喘息のメカニズムは、アセトアルデヒドによる肥満細胞からのヒスタミン遊離による気管支収縮によって起こっていることが直接的に証明され、転写因子NFκBの関与が示唆された。
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