アセトアルデヒド刺激による気管支の収縮を、肺癌患者より摘出された正常部分気管支組織を用いて圧トランスデューサーで測定したところ、有意な収縮を認めた。RIA法による測定で、アセトアルデヒド添加後培養上清中には有意なヒスタミンの上昇を認めたが、トロンボキサン及びロイコトリエンの上昇は認めなかった。アセトアルデヒド添加により、培養上清中のIL-5、Eotaxin、RANTES、TNF-α、IL-8濃度は変化しなかったが、GM-CSFが有意に産生された。アセトアルデヒド添加前の気管支組織と、添加後の収縮力測定後の気管支組織標本に対して、NFκBに対する免疫染色を行ったところ、アセトアルデヒド添加前の組織では気道上皮細胞の基底層のみにNFκB核染色陽性細胞が認められたが、アセトアルデヒド刺激により気道上皮全層の核、細胞質が陽性となった。更にアセトアルデヒド刺激により気道粘膜下の腺組織がNFκB核染色陽性となった。 ダニアレルゲン感作マウスの肺を、アセトアルデヒドと結合することが知られているエストロゲン受容体に対する抗体で染色したところ、気管支血管周囲の炎症細胞が陽性であった。このマウスに経鼻的にアセトアルデヒドを投与したところ、肺組織のNFκB活性亢進とともに、気道炎症の増悪と気道過敏性亢進が認められた。 以上より、アセトアルデヒドは気道の肥満細胞を脱顆粒させ、気道収縮に関与するばかりではなく、気道上皮細胞や腺細胞からのサイトカイン産生をNFκBを介して活性化し、気道炎症の発症、維持にも関与する可能性が示唆された。
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