肺癌による手術にて得られた肉眼的に正常な気管支組織をSCIDマウスの皮下に移植した後に、アトピー型喘息患者の末梢血単核球をそのSCIDマウスの腹腔内に移注すると移植ヒト気管支組織に喘息患者の末梢血CD3、CD4、CD8、CD45RO、CD103(αeβ7 integrin)陽性細胞が健常者の末梢血単核球を移駐した群に比較して有意に多く浸潤することが確認された。さらに、この組織のなかのmRNAの発現を検討した結果、アトピー型喘息患者の末梢血単核球を移注した移植ヒト気管支組織から、IL-4およびIL-5のmRNAが健常者の末梢血単核球を移駐した群に比較して有意に強く発現していることが確認され、かつ、IL-2およびIFN-γは両群において有意な差はなかった。 これらの結果から、喘息患者のリンパ球が気道組織へ移行する特性(ホーミング機能)を持ち、そのリンパ球は気道局所でTh2-タイプの性質を呈していることが確認された。よって、喘息の発症機構の一つとして、気道局所で抗原提示細胞とリンパ球によって引き起こされる炎症が中心的な役割を担っている可能性が示唆された。 これらの研究に加えて、私達のグループが初めて確認したヒト気管支上皮内リンパ球の特性を検討した結果、気管支上皮内リンパ球は、上皮下リンパ球と比較して、活性化リンパ球は少ないが、CD103(αeβ7 integrin)が強く発現する事を確認した。また、喘息患者の気管支上皮内リンパ球は、非喘息患者のものと比較してCD4が少なく、CD8が多いことも判明した。しかしながら、まだ、これらの機能的意義についてはまだ解析できていなく、研究の新しい分野としてさらに検討を進めていく。
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