研究概要 |
ウィルス感染時にはvirus-specific CD8+T cellによるMHC class I拘束性の反応が強く起こり,IFN-γが産生される。一方,疫学上,ウィルス感染が抗原感作を促進していることが報告されている。これまで,私どもは実験的に動物でインフルエンザAウィルス感染後に経気道アレルギー感作が促進されることを明らかにしてきた。ウィルス感染時に抗原吸入を加えると,どのような機序でTh2反応に傾くかを検討した。 マウスにインフルエンザAウィルス感染させ,感染急性期(ウィルス接種3-7日後)あるいは回復期(10-14日後)に卵白アルブミンの吸入を行い,その3週後に抗原吸入チャレンジを行った。急性期感作群では,気管支肺胞洗浄液のリンパ球数及び好酸球数の増加,さらにtype2サイトカインであるIL-4,IL-5も増加した。また,抗原特異的IgE抗体,抗原特異的IgG1抗体が上昇し,気道過敏性の亢進も認められ,type2の免疫反応が成立した。しかし,回復期感作群では上記反応が認められず,IFN-γの増加が認められ,type1の免疫反応が認められた。免疫組織学的検討では,急性期群で抗原吸入後に樹状細胞が気道表面に出現したが,回復期群では樹状細胞は認められなかった。所属リンパ節を観察すると,急性期群では樹状細胞が認められ,抗原の貪食像が認められた。一方,回復期群では気道,所属リンパ節にも樹状細胞は認められないが,マクロファージが認められ,抗原の貪食像が認められた。 以上より,ウィルス感染急性期の抗原吸入では気道に抗原提示細胞として樹状細胞が出現し,type1免疫反応が成立するが,感染回復期の抗原吸入ではマクロファージが免疫反応を担い,type2免疫反応を引き起こす。この結果は,ウィルス感染の時期により免疫反応が異なることを示唆する。
|