研究概要 |
ヒト検体の採取に関し、院内倫理委員会より研究計画の承認を受け、血液を採取、DNAの分離を開始した。まず日本人健常者89名、肺結核症患者154名を対象に、NRAMP1遺伝子上の各種遺伝子多型を解析した結果、フロモータ上のGTリピートに関し、稀なアリルである1,2型の頻度が結核症患者において有意に高いことを見いだした。次に日本人健常者100名、肺線維症患者50名を対象として、CCケモカインであるMCP-1のプロモータ領域にある-2518単一遺伝子多型の頻度を検討した。日本人における-2518のアリルG頻度は、欧米人に比し有意に高値であった(0.59v.s.0.29)。しかし、健常者と肺線維症患者とでアリル頻度に差を認めなかった(A/AG/GG;0.20/0.46/0.34v.s.0.15/0.52/0.33)。血液中のMCP-1値は肺線維症群で有意に高値であり(361±239pg/ml v.s.40±9;p<0.0001)、ジェノタイプ間で平均値が異なる傾向があったものの、統計的有意差を認めるに至らなかった。今後患者数を増やし検討予定である。また高速シークエンサーAB3700を用いて、MCP-の他の既知、未知遺伝子多型、およびMCP-1に対応する受容体CCR2の遺伝子多型の解析を開始した。 次に、ラット放射線肺臓炎モデルにおいて、肺での各種ケモカイン遺伝子発現パターンをリアルタイム遺伝子定量装置AB7700を用いた定量的RT-PCRにより解析した。肺組織において、対照群に対する照射群のMCP-1,MIP-1αβ,MIP-2,lymphotactin,fractalkine遺伝子の相対的発現量を求めた結果、照射4週後群ではMCP-1 mRNAが4.8倍と有意に高値であり,8週後群ではMCP-1 mRNAが2.3陪,MIP-1α mRNAが1.8倍と高い傾向を認めた。 さらに、マウス・セプシス・モデルにおいて、熱傷前負荷の有無による予後およびサイトカイン蛋白・遺伝子発現パターンの差異を検討した。72時間生存率は、前負荷なし群100%に対し、前負荷有り群0%であった。ELISAによるTNFα,MIP-2定量、AB7700を用いた定量的RT-PCRによるMIP-2遺伝子発現の検討では、熱傷前負荷なし群で2時間後に単峰性に高値を呈したのに対し、負荷有り群では2、8時間後で2峰性に高値を取り、サイトカイン最高値も前負荷なし群に比し高かった。
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